【A7075】超々ジュラルミンとは? 材質と加工におけるポイント

 A7075(超々ジュラルミン)は、非常に優れた強度と軽さを併せ持つ、まさに”夢のアルミ合金”です。しかし、その物性ゆえに加工が難しい難削材でもあります。A7075はどんな特徴を持っているのでしょうか?また、どのような製品・業界において活用されているのでしょうか?

 本記事では、A7075と活用事例、そして加工のポイントについて徹底解説します!

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A7075とは?

 アルミニウム合金の一種であるジュラルミン(英:duralumin)は、実は下記のように3種類に分けられます。いずれも圧延用合金で熱処理を施しており、鋼材に匹敵する強度を備えています。

 ①A2017(ジュラルミン)

 ②A2024(超ジュラルミン)

 ③A7075(超々ジュラルミン)

 ジュラルミンと超ジュラルミンは、Al-Cu-Mg系合金(2000系アルミ合金)に属します。超々ジュラルミン(英:Extra Super Duralumin)は、アルミニウム(Al)に亜鉛(Zn)とマグネシウム(Mg)を添加した、いわゆるAl-Zn-Mg系合金(7000系アルミ合金)の一種です。Zn・Mgに加え、より強度を上げるためにCuを添加しているため、厳密にはAl-Zn-Mg-Cu系合金に分類されます。

 

A7075の強み 

 A7075の一番の特徴は、強度と硬度です。

 ジュラルミン系アルミ合金の特徴は、軟鋼(SS400)やオーステナイト系ステンレス(SUS304)など鉄鋼材料に対して約3分の1の軽さであるにも関わらず、それらと同レベルの強度・硬度を持っている点です。また、他のアルミ合金に比して切削性も良好ですが、強度に比例して硬度が上がるため切削性も悪くなります。

 アルミ合金の中で最も強度が高いのが、このA7075になります。これは、焼き入れ後に一定時間放置し強度を上げる時効硬化という処理を施しているためです。なお、長い期間が経過すると強度が低下する点は注意する必要があります。さらに、A2017・A2024と異なり、亜鉛の含有量が高い(5%以上)というのも強度が高い所以です。

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 アルミニウムというと、純度99%以上のいわゆる純アルミニウム(A1100)やAl-Mg系合金で汎用的に利用されているA5052が有名ですが、これらは中程度の強度、良好な耐食性、溶接性、切削性が特徴です。

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 なお、強度は引張強さと言われることもあります。この引張強さというのは、ワークに外部から力が加わると内部応力が発生します。応力が一定以上(降伏点)に達すると突然低下し、変形して元に戻らなくなります(塑性歪み)。そこから再び応力が大きくなりますが、それが最大になり破断する直前の点を引張強さと呼びます。

 

A7075の弱点

 高い強度と硬度に恵まれたA7075にも弱点があります。それは、溶接性・耐食性、そして切削性の悪さです。

 A7075は、ステンレスやA5052に比べ溶接性が悪く、溶接を施すと割れが発生してしまう可能性が高いです。同じ7000系のアルミ合金には、溶接性に優れ新幹線の車両部品に使用されているA7N01もありますが、A7075に比べると強度がやや劣ります。

 一般に、アルミとその合金は酸素と結びつき表面にアルマイトと呼ばれる酸化膜を生じるため、耐食性が高いと言われています。しかしながら、A7075は1.2~2.0%のCuを含むため、酸化しやすく耐食性に劣ります。さらに、溶接性・切削性も乏しく、使用環境に応じて応力腐食割れへの対策を講じる必要があります。応力腐食割れというのは、腐食環境下で応力の作用により割れが発生する経年損傷の一種です。よく知られている対策は、同じアルミ合金のA7072を表面に貼り付ける、あるいはアルマイトを利用して防食処理(防錆処理)を施すという方法です。

 また、A2017とA2024は比較的切削性が良好であるのに対し、A7075は切削性に劣り、いわゆる難削材と言われることが多いです。

 

比重

(mg/m³)

強度(N/mm²) 硬度(HB) 切削性 溶接性 耐食性
SS400 7.85 400-510 130
SUS304 7.93 520 187
A5052 2.68 260 68
A2017 2.79 425 105
A2024 2.78 470 120
A7075 2.80 570 150

<表>

 

A7075 活用事例と加工のポイント

 ここでは、A7075の活用事例と加工する際のポイントについて詳しく解説します。

A7075の活用事例

 その軽さに対して非常に高い強度・硬度を誇るA7075は、様々な製品部品・業界で活用されています。

 具体的には、航空宇宙機器や船舶、輸送機械部品、そして野球の金属バットやスキー板などスポーツ用品などによく使われます。特に航空機部品の約7割はジュラルミンをはじめとするアルミ合金が使用されており、その範囲は人工衛星やロケットにまで及びます。総じて高い強度・硬度と軽さが求められる製品・部品に利用されている例が多いです。

 ここで、A7075の開発経緯について少しお話しします。A7075が開発されたのは、なんと日本です。1936年、当時の住友金属工業(現:住友精密工業https://www.spp.co.jp/)が開発し、有名な日本海軍のゼロ戦(零式艦上戦闘機)の部品にも使用されました(外部リンク:https://aerospacebiz.jaxa.jp/partner/company/19/)。

 一般に、A7075は他のジュラルミン・アルミ合金と比べ高価なため、強度が必要な箇所に絞って使用される傾向があります。

 以上をまとめると、SS400やステンレスくらいの強度は欲しいがなるべく軽量化したいという部品を加工・製作する際は、A7075の採用がおすすめということになります。

 

A7075 加工のポイント

 難削材に属するA7075、その高い強度・硬度ゆえ、チタンやタングステンと同様に加工が難しい素材になります。

 また、もう一つ気をつけたいポイントは、アルミ合金の加工で起こりやすい溶着の問題です。ワークが治工具に溶着してしまうと加工性が大きく低下してしまいます。そのため、ワークが必要以上に熱を持たないように、クーラント液(冷却水)を使用する、加工速度を下げるといった対策が必要です。

 しかし、アルミ合金は加工硬化(歪み硬化)の心配はありません。加工硬化は、加工する際に必要以上に熱を加えると、塑性変形が起き硬化するという現象です。SUS304などで起きやすく切削が困難になりますが、一般にアルミ合金は起こりにくいと言われています。

 

研削・切削コストダウンセンターの加工実績

 研削・切削加工コストダウンセンターは、A7075の豊富な加工実績がございます。

加工実績①:半導体業界向け放物面ミラー

 こちらは、A7075製の放物面ミラーになります。超精密非球面加工機ULG-100D(SH3)と単結晶ダイヤモンド工具を用いて超精密切削加工を行いました。加工が難しいA7075ですが、Φ15mm×高さ20mmの放物面ミラーを表面粗度Ra20nmに仕上げることに成功しました。

>>>加工事例の詳細はこちら

加工実績②:航空機用部品

 こちらは、複雑形状加工された航空機用部品です。五軸切削加工を施しました。

 当社では、A7075をはじめとする難削材加工に関するノウハウを蓄積しており、このような複雑形状でも高精度の仕上げ加工を行うことが可能です。

>>>加工事例の詳細はこちら

A7075加工なら研削・切削コストダウンセンター.comにお任せください!

 

 研削・切削加工コストダウンセンター.comを運営する株式会社木村製作所では、部品の粗加工・精密加工から、調達、表面処理、検査・測定といった加工の前後工程も含めて一貫対応しております。当社は、本社で工作機械部品や半導体製造装置部品といった精密部品の加工を行っており、ナノ加工研究所で超精密加工・仕上げ加工から品質保証の超精密検査を行っております。そのため単なる部品加工だけでなく、部品の一部に必要な超精密加工や検査・測定も一緒に私たちにお任せいただけますと、一貫して対応する分だけコストも抑えることが可能になります。

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